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  • 2023/10/15

CD『CLASH / Masato Jaike』

CD『CLASH / Masato Jaike』
ジャケットはアルバムの「顔」となります。
いまでは簡単に試聴したり、youtubeでトレーラーを見聞きすることが容易になってしまいましたが、かつては主人公である「音」よりも真っ先に情報として届き、ジャケットの絵をみながら発売日まで指折り数えて心待ちにしながらその瞬間を待ち侘びたものです。
そんな時代の「レコードジャケット」に関わることは叶いませんでしたが、20年以上ミュージシャンの方のCDジャケットを担当させていただくチャンスがたくさんありました。音楽の顔としての完成度と自分の好みはまた別の話ですし、また、そのジャケットが音とどんな風に絡み合い、時間をかけて着こなしてゆくか、その熟成もまたミュージシャンご本人とは違った感覚を持っているかもしれません。何年やってもこの仕事は本当に最高の生業だと思っています。
いつものことながら枕が長くなってしまいましたが、札幌をベースに活躍するサックス奏者 蛇池雅人さんの新作のジャケット、どうですか。
イラストは爽あゆみさん、彼女もまた札幌をベースに広く活躍されている若手イラストレーター、女性雑誌の仕事も多いので知らずに見ていることもあると思います。
今回の起用は蛇池さんからの提案で実現した作品。JAZZのジャケットといえば、Blue Noteしかり、ECMしかり、どちらかといえばクールでオシャレで、いわば「期待通り」のカッコよさ、よく言えば安定、悪く言えば変わり映えのない、というものがほとんどではないでしょうか。そこに、まさかこうくるか、といった今回のアプローチ。
タイトルに込められた、静かなる情熱、破壊力、もはやフランスの哲学者デリダが提唱した「脱構築」のようなこの眼差し。前作2作もジャケット含めて(自画自賛)とっても素晴らしいアルバムなのですが、ここにきてその「かっこよさ」に胡座をかかない未来派、いや音楽界の無頼派?のごとき作品が出来上がりました。
レコードならば「針を落とせば1音目から部屋の空気が変わり」と書きたくなるような音の世界を是非とも体感していただきたいです。
蛇池さんのCDはライブ会場と、こちらからも買えます
CLASH / 蛇池雅人
Alto sax / Masato Jaike
Piano / Masaki Minamiyama
illustration 爽あゆみ
design 橋本亜矢